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目標は地域ぐるみの脳卒中予防

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 日原診療所(島根県津和野町)の須山信夫院長は、大学病院から中小病院、診療所と、これまで3つのステージで医療に携わってきた。高齢者が多かったり、大学病院時代に診療した経験のない小児科の患者がやってきたりと、地域医療に携わり始めた当初は大学病院との違いに戸惑ったというが、今では地域ならではの面白さも感じ始めている。日原地区の住民を巻き込んで、地域全体の脳卒中発症率を引き下げることが目標だ。

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■診療所の役割は守備範囲の見極め
 須山さんは、毎朝8時にはやって来る。記者が取材した日は、午前中に関連病院の津和野共存病院(津和野町、99床)で外来診療をこなし、午後には日原診療所と、併設の老健施設で勤務した。夕方には、往診にも出掛けて行った。

 日原診療所がカバーする日原地区は、高齢化率が40%に迫る地域。このため診療所で扱うのも、継続的な身体管理のウエートが大きくなる慢性期疾患が中心になる。
 須山さんはいつも、患者の家族構成や介護保険サービスの種類といったバックグラウンドをできるだけ詳しく把握するようにしている。また、居住地域や通勤手段・時間なども確かめ、これらのデータを地図に落とし込む。急に連絡が取れなくなったり、体調が悪化したりしたときに、いち早く察知して対応できるようにするためだ。
 地域医療では、患者や家族との密接なかかわりが求められる。須山さんは「大学病院とはここが決定的に違う」と話す。

 将来的には、津和野共存病院のバックアップを受けながら、「在宅療養支援診療所」としての体制を整備する方針だという。診療所に通院できないお年寄りたちをカバーするには、往診に今まで以上に力を入れていく必要があるからだ。

 もっとも、日原地区で内科を扱うのは日原診療所を含めて2か所だけ。大学病院時代には診察した経験のない小児科の患者もやってくる。そんなとき、須山さんは断らずに診察し、必要に応じて津和野共存病院に紹介するようにしている。

 地域には、幅広い分野をカバーするいわゆる総合医と、一つの分野に精通した専門医の両方が必要というのが須山さんの考え方だ。
 「『診る』ことと、『診ることができる』のとは別。両方に対応できれば最高だけど、難しい。だからわたしたち総合医は診られるところまでを診て、重症患者を専門医に確実につなげられればいい。大切なのは、自分の守備範囲を見極めることです」

■健康づくり、地域全体に
 須山さんは、大学病院では病棟医長や医局長を務めたが、医局人事に伴い、津和野共存病院に1999年に赴任。そして今年5月、経営母体が同じ日原診療所の院長に就任した。専門は神経内科。大学病院では、患者や家族と深くかかわり合う機会はあまり多くはなかった。
 「津和野町には、お年寄りの患者さんがとても多い。そうかと思えば、子どもたちもやって来る。最初は正直、戸惑いました」

 地域医療のノウハウは、津和野共存病院で身に付けた。病院には、小児科や外科などの専門医がそろっている。自分が対応し切れない患者が来ても、病院全体としてカバーできる。各科の医師たちと接するうちに、自分がどこまでカバーすべきかの見極めを学んだ。
 「これは、お互いの顔が見える中小病院だからできること。大規模病院だと、診療科の違う医師同士が顔を合わせないことすらある。中小病院には中小病院なりの、診療所には診療所なりの良さがあります」

 住民の健康づくりにも力を入れている。「糖尿病教室」を年7回、「健康教室」を月1回開くほか、保健所が主催する「パーキンソン病友の会」にも協力している。日原診療所に赴任して初めて開いた6月の「健康教室」には、住民ら約30人が参加した。

 ゆくゆくは、地区の住民を巻き込んで、地域全体の脳卒中の発症率を低下させるのが須山さんの目標だ。日原地区の人口は約4000人。須山さんの見立てだと、このうち1000人程度は診療所でカバーしている。
 「本気でやれば、かなり思い切ったことができるはずだ」
 地域医療に携わるようになって間もなく10年。こんな醍醐味(だいごみ)も味わえるようになった。

 診療所の横を流れる高津川では日中、釣り人が糸を垂れる。「途中にダムがないので、アユが川上までさかのぼってくるんです」。
 須山さん自身、休日にはこの川でカヌーを楽しむ。仕事と同じで、田舎ならではの良さがあるという。


更新:2008/10/01 18:22   キャリアブレイン

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