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認知症の人も働きたい!―グループホームでの「就労デイ」


 団塊の世代が定年を迎え、急速に高齢化が進行している日本。65歳以上の高齢者のうち、10人に1人が認知症との調査結果もあり、今後ますます地域で認知症の人をどう支えるかが問われている。こうした中、東京都日野市にある「グループホームきずな」では、地域に住む認知症の人が仕事をして社会に貢献する場をつくる「就労デイ」という取り組みを行っている。(外川慎一朗)

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■モデル事業としての取り組み
 グループホームきずなは、2007年度と08年度の2年間、東京都の「認知症支援拠点モデル事業」の事業者に採択され、多くの取り組みを行ってきた。認知症の人を抱える家族に対する支援として、家族会をつくり、情報交換ができる場を設けた。また、認知症サポーター養成講座を企業や団体、学校などで開催。日野市が目標としていた1700人のサポーターのうち、626人を養成した。このほか、地域の医療機関、ケアマネジャー、地域包括支援センター、行政の担当者などが集まり、「ネットワーク会議」を8回開催。それぞれの分野の専門家が認知症の人を支えるための情報交換などを行った。

■「あなたができることを仕事としてやってください」
 就労デイは、このモデル事業の一環として、グループホームきずなで所長を務める本村雄一さん自らが企画を考えて取り組んだ。地域や社会に貢献したいという思いを持つ認知症の高齢者ができることを仕事として行い、昼食や嗜好品といった対価を得られるというもので、07年8月から今年3月までの間に延べ59回行い、1回当たり10人弱が参加した。

 就労デイの特徴は、地域に住む認知症の人を参加の対象にしたこと。グループホームに入所している高齢者もいるが、参加者の多くは地域包括支援センターなどに広報を行って集めた地域住民だ。

 仕事の内容は多岐にわたる。
 ある時、ピザ店からチラシにクーポン券をホチキスで留める作業を受注した。皆が力を合わせ、1日がかりで1000枚以上のチラシにクーポン券を留めた。仕事が終わった後、対価としてピザを用意したのだが、施設側は「さすがにピザは食べないだろう」と考え、おにぎりも用意した。すると、初めてピザを食べた80歳代、90歳代の高齢者が、「こんなおいしい物、初めて食べた」などと言い、平らげてしまったという。「本当、われわれもびっくりしましたよ」と本村さん。
 かつて和菓子職人だった参加者は、就労デイが終わった後に皆で食べるためのおはぎを作った。仕事着を持参し、就労デイの始まる1時間前から準備するという熱の入れよう。材料や作り方を基に、「このおはぎは1個いくらで売れるはず」などと原価計算までしてしまった。
 和食の料理人だった参加者は、包丁研ぎを行った。施設の職員が安い包丁を持って行くと、「そんなもの研げないよ」と一蹴された。そこで、木の箱に入った高価な出刃包丁を持って行くと、「これはいい」と丁寧に研いだという。
 ほかにも、施設や職員が所有する車を洗ったり、施設の外にあるベンチにニスを塗ったり、植木の剪定を行ったり、ぞうきんを作ったりと、参加者それぞれの能力を生かした仕事により、社会の中での役割を創出できたという。

 労働に対する対価としては、喫茶店から出前を取ることもあれば、施設の近くにあるうどん店に行くこともあった。メニューを見て自分が食べたいものを選ぶことが、多くの参加者にとっては貴重な機会であり、皆うれしがっていたという。

 参加者の中には、就労デイに参加する以前、デイサービスの用意した「高齢者向けの」プログラムを受けたくないと引きこもっていた人もいた。しかし、仕事ならばと就労デイに参加。その後、デイサービスにも通うようになるなど、就労デイが介護保険サービスの利用につながった事例もあった。また、既にデイサービスに週2回通っていたが、3回にすると自己負担が必要になるとして、就労デイに参加するようになった参加者もいるという。

■モデル事業終了後も継続、課題は財源
 モデル事業が終了した今年度も、これまでと同様、週に1回のペースで就労デイを継続している。しかし、課題は財源だ。
 昨年度までは都のモデル事業の一環として実施していたため、補助金を活用できた。しかし、補助がなくなった今年度からは、母体の社会福祉法人が独自に資金を出して実施している。このため、昨年度までは午前中に就労してもらい、その対価として昼食を提供していたが、時間を午後にずらし、対価をおやつに変更するなど、経費節減に努めている。

 今後は、関連のNPO法人にこの事業の運営を移行させた上で、ボランティアの人を主体にしながら、人件費を抑えた形での継続を考えている。本村さんは、「認知症の高齢者が世の中の役に立てる場を提供することで、高齢者が活性化し、意欲を示すことができた。ぜひ今後も継続していきたい」と意気込んでいる。

( 2009年08月20日 11:15 キャリアブレイン )



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