「苦楽をともに、一緒に働きませんか!」
1人ひとり 個別の条件を大切に
東京勤労者医療会「東葛(とうかつ)病院」(千葉県流山市)
ママさん看護師も多数活躍
看護師の厳しい労働実態が指摘され、離職率が新卒で9.3%、全体では12.3%に達するなど、看護師の離職を避ける取り組みが看護現場の重要な課題になる中、「長く働き続けられる病院」が、千葉県流山市にある。東京勤労者医療会・東葛(とうかつ)病院だ。
ここでは、少子化の時代にあって、4人・5人の子どもを育てながら仕事を続けているママさん看護師もいる。同病院の離職率は6.8%で、全国平均の約半分。その訳は、「みんなで支え合おう」を合言葉に「職員が、それぞれの状況に合わせ、育ち働ける病院づくり」を全職員が一体になって進めていることにある。
日本の医療現場は、医師不足や看護師不足で厳しい労働を強いられているが、逆風≠ノ負けず、多様な教育・研修制度も整え、みんなで頑張っているのが東葛病院だ。
同病院の職員たちは口を揃え、全国の看護師に向け、こんなエールを送っている。
「私たちと苦楽をともにしながら、一緒に働いていきませんか!」−。
<ともに育ちあう仕組み>
「東葛病院の教育・研修のスタンスは、職場の教育力を高めて『ともに育ちあう』ことにある」。こう話すのは、副総看護長で医療連携室を担当する山本登美子さんだ。
同病院の教育体系は、初期研修(1〜3年)・中期研修(4〜5年目)・中堅研修(6年目以降)・管理研修が制度教育の縦軸に位置づけられている。横軸としては、褥瘡(じょくそう)予防・NST(栄養サポートチーム)・安全対策などの各委員会、医療制度等の幅広い院内学習会や看護協会・他団体のセミナーへの参加などが据えられ、病院理念を実践できる看護師の養成と多様なスキルアップが図られるようになっている。 特に、制度教育の1年目研修では、3年目の看護師がプリセプターとなって、現場の指導と集合での学習や確認といった1人ひとりに合わせた細やかな研修を組む。新卒の看護師にとって不安も大きい夜勤自立については、日勤でしっかりと患者さんの観察やケア・処置の実施ができるようになってからと、8月の完全独立を目指す。「ゆっくり・しっかり」をコンセプトとして見守られ育つ仕組みをつくっている。
また、看護師が「片まひの状態で慢性疾患ももっている患者」という設定で、体験入院。車いすで自走やベッド上での排泄を経験し、左手でミキサー食を食べ、患者さんの大変さを実感する。ここには、患者さんの気持ちになり、寄り添うことを大切にする看護師を育てたいという願いが込められている。
さらには、看護介護活動研究集会を毎年実施し、職場ごとに看護の実践をまとめて病院の看護理念である「患者の立場に立ち、患者のための看護」を確認することにも力を入れている。
看護師となって6年目で妊娠中の高松織理江さんは、間もなく初めての出産を迎える。「辞めたいと思ったこともあったが、周囲に話せるスタッフがいて頑張ってこられた。出産をサポートしてくれる体制があって安心。看護現場は忙しく大変な面もあるが、人の命にかかわる仕事で、本当にやりがいがある。どんどん来てほしい」と、新しい仲間が来ることを心待ちにしている。
<地域唯一の小児医療に力>
教育・研修に余念がない東葛病院が、診療で最近、特に力を入れているのは小児医療だ。小児科は医師不足が目立つ診療科の一つで、各地で相次ぐ小児科の閉鎖が、今や社会問題として国会でも議論されている。同病院がある流山市内でも同様の事態が起きており、市内で小児床を備えているのは東葛病院だけだ。 約5年前に大学医学部教授の職を辞して地域医療に貢献するため同病院に着任し、小児医療をリードしてきた医師・伊東繁さん(東葛病院付属診療所所長)が語る。
「小児科には救急外来患者も多く、小児科医の疲弊を招く原因になっている。しかし、その8割は症状が軽く、小児科以外でも十分に対応できる。そうした現実を踏まえ、東葛病院では夜間の救急外来を他の診療科と協同で担っている。それに当たっては、医師が共有し合える診療のチェックシートも作成している。こうすることで小児科医は疲弊せず、生き生きと働けている。だから、小児科が次々に閉鎖されるという日本医療の現状にあっても、小児医療を進めていく展望が持てる」
同病院の小児医療は、「患者が決めた! いい病院ランキング」に掲載されており、患者からの評価も高い。子どもが入院中の主婦・石渡富士美さんは「子どもを育てていると、医療機関は欠かせない。近くに安心してかかれる病院があって助かる。入院できる小児科が減っているが、地域には小児科が整備されているなど、住みやすい・育てやすい環境がないと困る。東葛病院には頑張って欲しい」と、患者の立場から小児科の必要性を話した。
小児科は、看護学生らの人気が高いが、ここでは小児科を志す看護師のニーズにこたえられる環境も整っている。
<地域を大事に新たな取り組みも>
小児医療に加え、同病院が新たな取り組みとして努めているのが、回復期リハビリ病棟だ。同病棟は、症状が安定した患者に対して、脳卒中などの発症で低下した機能回復のためにリハビリを集中して提供し、家庭復帰を支援する。リハビリ医療では、医師・理学療法士・作業療法士・看護師・介護福祉士らのチームによる取り組みが重要で、回復期リハビリ病棟になると、チームによる専門的なリハビリが提供できるようになる。同病院では今年7月の開設に向けて現在、準備を進めている。
リハビリ専門医の北村依理さんは、チーム医療の重要性を踏まえ、こう呼びかける。
「東葛病院には、救急機能と急性期病棟があり、これに回復期リハビリ病棟が加わると、病院は24時間安定した状態で患者さんの全身管理を行え、リハビリに専念できる。これにはチーム医療が大事だが、患者さんの家庭復帰を支援するためには、患者さんや家族を支える看護師の役割が欠かせない。患者さんに接する機会が多い看護師が、患者さんや家族の気持ちを受け止め、リハビリの進み具合を含めた日常のケアという役割を果たしていく。5月から試行しているが、現場の看護師は生き生きとしている。やりがいのある仕事と思うし、ぜひ一緒に働いていきたい」<働き続けられる病院>
ともに育ちあう教育・研修システム、地域医療に立つ小児医療の展開や回復期リハビリ病棟の開設などに加え、全国で看護師の離職が相次ぐ中、同病院にはママさん看護師が多いという魅力もある。
看護師になって17年目。ずっと東葛病院に勤めている倉持恵子さんは、高校1年生を筆頭に小学校2年生までの5人の子どもを育てながら、看護師を続けている。
途中、産休などで休んだことはあるが、17年も勤めてきた倉持さんは、東葛病院のことを「居心地がいい病院」と話す。看護という仕事と育児など家庭生活との両立を図ってきた倉持さん。最近、嬉しいことがあったという。中学生の娘が「将来、看護師になりたい」と思っていることだ。「逆に、私を励ましてくれるほど」と喜びをあらわにするが、このように長く働き続けられる病院であることが、東葛病院の離職率の低さにも表れている。
<病院の環境づくりをともに> 日本の看護現場は、医療の高度化や在院日数の短縮化などで忙しさが極まっている。看護師の離職も後を絶たない。そうした現状を踏まえ、総看護長の志田栄里子さんは「医療・看護現場には厳しい側面がある。そんな現実と理想とのギャップに戸惑ったり、悩んだり、様々な思いがあると思う。でも、私たちは、そうした矛盾がなぜ起きるのかについて、一緒に考えて行動できる看護集団でありたい」と話した上で、次のようなメッセージを送っている。
「最も慌しい急性期病棟では燃え尽きる<Pースの多いことが報告されていますが、東葛病院では多くの看護師が辞めないで働き続けています。ベテランも若手も新人も、みんなが一緒になってお互いを尊重し、患者さんに寄り添う看護をしようと頑張っています。業務に追われる状況もあるでしょうが、東葛病院でともに働いて行きましょう」
東葛病院ホームページ
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更新:2007/06/05 10:18 キャリアブレイン
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